
目次
家族から「息が止まっている」と言われたら
大きないびきや日中の強い眠気は、疲れのせいとは限りません。睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインとして指摘される場合もあります。気道が狭くなった状態が続くと、心臓や血管への負担が積み重なると考えられています。岡崎市で眠りにお悩みの方へ、受診を検討する目安と検査の流れを整理しました。
この記事の要点まとめ
- 大きないびきや呼吸停止の指摘は、睡眠時無呼吸症候群のサインである場合があります
- 放置すると高血圧や心血管疾患、日中の眠気による事故と関連する可能性が指摘されています
- 自宅での簡易検査から始められ、症状に応じてCPAPなどの治療選択肢があります
いびきの放置が引き起こす重大な健康リスクと生活への影響

いびきは音の問題だけで語れるものではありません。音が鳴っているということは、空気の通り道である上気道がすでに狭くなっているサインとも考えられます。その狭まりが進み、呼吸の停止を繰り返す状態が睡眠時無呼吸症候群(SAS)です1。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と高血圧・脳心血管疾患の関連
無呼吸の間、体内の酸素濃度は下がります。夜のあいだに何度も酸素の足りない状態が訪れる、といったイメージです。そのたびに体は交感神経を働かせて呼吸を立て直そうとするため、眠っているはずの時間帯に血圧や心拍が上がるとされています。
こうした負荷が毎晩重なることで、高血圧や糖代謝の乱れといった生活習慣病、さらに心筋梗塞や脳卒中との関連が指摘されています1。いびきは睡眠の悩みであると同時に、循環器の面からも目を向けておきたいテーマです。
日中の強い眠気による業務パフォーマンス低下と運転事故のリスク
無呼吸が起こるたび、脳は短い覚醒反応を起こすといわれます。ご本人の記憶には残りませんが、睡眠は細かく途切れた状態です。そのため、時間だけは眠れていても休んだ感覚が薄く、日中に強い眠気が押し寄せてくることがあります。
会議中の居眠り、確認作業でのミス、判断の遅れ。品質管理や管理職のように集中力が求められる仕事では、こうした変化が積み重なりやすい傾向が指摘されています。さらにマイカー通勤で高速道路や渋滞路を走る方にとって、運転中の眠気はご自身だけの問題では済みません。ヒヤリとする場面が増えたと感じたら、相談を考えたい段階です。
【よくある誤解】「ただの疲れや寝相のせい」で見過ごさないための考え方
忙しいから眠いだけ、体重が増えたせい、年齢のせい——そう理由をつけて受診を先送りにする方は少なくありません。いびきの話題を人に切り出しにくい、大げさにしたくないという気持ちも働きます。
とはいえ、疲労と無呼吸では自覚症状が似ており、ご自身で見分けるのは簡単ではありません。判断がつきにくいからこそ、検査という客観的な指標で確かめておく意味があります。
受診を検討すべきいびきの症状と相談先を選ぶ基準
どの程度のいびきなら相談していいのか、線引きに迷う方は多いものです。判断の手がかりになるポイントを整理します。
医療機関へ行くべき目安となるセルフチェックポイント
次の項目にいくつも当てはまる場合は、専門的な検査を一度ご検討ください。
- 家族から「呼吸が止まっている」と指摘された
- いびきの音が大きく、自分のいびきで目が覚めることがある
- 起床時に頭が重い、口の中が乾いている
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 7時間前後眠っても日中に強い眠気がある
- 血圧が高め、または体重が増えてきた
なかでも家族からの呼吸停止の指摘は、ご本人では気づきにくい貴重な情報です。指摘を受けたときが、相談を始める一つの目安になります。
市販のいびき対策グッズの限界と放置を長引かせない考え方
口閉じテープや鼻腔拡張テープ、横向き寝を促す枕などは、鼻づまりが背景にある軽いいびきで一定の役割を果たす場合があります。減量や就寝前のお酒(アルコール)を控える工夫も、気道の状態に関わる生活習慣として知られています。
ただ、これらは喉の奥で気道が閉じるタイプの無呼吸そのものに働くものではありません。音だけが小さくなり、無呼吸の存在が見えにくくなる場合がある点には注意が必要です。セルフケアと検査は、どちらかを選ぶのではなく並行して考えるのが現実的でしょう。
何科を受診すべきか?睡眠外来や心療内科など専門窓口の特徴
鼻や喉の形に心当たりがあれば耳鼻いんこう科、呼吸や生活習慣病の管理まで含めて相談したい場合は内科系、眠気や不眠を含めて睡眠全体をみてほしい場合は睡眠外来が窓口になります1。日中の眠気の背景に、不眠や気分の落ち込みが隠れていることもあります。
当院は心の症状の診療に加えて、睡眠障害の検査・治療にも対応しています。岡崎市で「眠れない」「眠りが浅い」「いびきを指摘された」といったお悩みをお持ちの方は、24時間受付のWEB予約からご相談いただけます。土曜日の診療も行っています。
睡眠外来における検査と主な治療の選択肢
「入院しないと検査できないのでは」という思いから足が止まる方もいらっしゃいます。実際の流れを知っておくと、見通しが立てやすくなります。
自宅で行える簡易モニター検査と精密検査(PSG検査)の流れ
多くの場合、まず問診で睡眠の状況や日中の眠気の程度を確認し、そのうえで自宅で使える簡易モニター検査に進みます。指先や鼻に小型のセンサーを付け、いつもどおり眠るだけで、酸素飽和度や呼吸の状態が記録されます。翌日に機器を返却し、後日結果を確認するという流れです。
簡易検査の結果や症状に応じて、脳波まで含めて詳しく評価する終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を検討します。1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)が、重症度を判断する客観的な指標として用いられます1。
CPAP療法やマウスピースなど症状に応じた治療法
中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸には、鼻に着けたマスクから空気を送り、気道が閉じないよう支えるCPAP(シーパップ)療法が広く用いられています1。検査で一定の基準を満たせば保険診療の対象となり、月ごとの受診と合わせて続けていく形が一般的です。
軽度の場合や、鼻や顎の形が関わっている場合には、下顎を前方に保つ口腔内装置(マウスピース)、耳鼻いんこう科での外科的処置などが選択肢に挙がります。まずは保険診療の枠組みで検査と診断を受け、その結果をもとに方針を話し合う順序をご案内しています。
早期相談がもたらす日常生活へのメリット
睡眠の状態が数値として見えてくると、「単なる疲れなのか、治療を検討する状態なのか」という長年の迷いに一つの手がかりが得られます。それが、生活を組み立て直す出発点になります。
当院院長は睡眠外来を担当してきた経験を踏まえ、患者さま一人ひとりの生活背景を伺いながら、検査や治療の道筋をご提案しています。気になった段階でご相談いただくことが、ご自身とご家族の日常を見直す現実的な一歩です。
よくある質問
Q. いびきを放置するとどうなりますか?
A. 背景に睡眠時無呼吸症候群がある場合、夜間の低酸素状態と睡眠の分断が繰り返されると考えられています。その積み重ねが高血圧や心疾患、脳血管障害との関連として指摘されており、日中の眠気による事故のリスクも問題になります。すべてのいびきが病気というわけではありませんが、一度確かめておく価値はあります。
Q. 注意が必要ないびきはどう見分けますか?
A. 手がかりの一つは「呼吸が止まっている」という同居の方からの指摘です。ほかにも、いびきが途切れて突然大きな音で再開する、起床時の頭痛や口の渇き、日中の強い眠気がある場合は、検査での確認をご検討ください。
Q. 無呼吸は何秒以上だと問題になりますか?
A. 医学的には10秒以上の呼吸停止を「無呼吸」として数え、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)で重症度を評価します。1回の長さだけでなく、一晩に何回繰り返されるかも重要な指標です。
Q. 重症になると、どのような状態になりますか?
A. 一般にAHIが30回以上を重症とする分類が用いられます。眠気が強まるだけでなく、循環器や代謝への負担が大きくなると考えられており、CPAP療法など継続的な管理が検討されます。判断は検査結果と症状を合わせて行います。
Q. 検査や治療に保険は使えますか?
A. 睡眠時無呼吸症候群の簡易検査やPSG検査、基準を満たした場合のCPAP療法は、現行制度では公的医療保険の対象として扱われています。自己負担額の目安は受診時にご説明しますので、事前にお尋ねください。
参考文献
1. 日本医師会「医療・健康に関する公開情報」 https://www.med.or.jp/
神戸大学医学部 卒業
2016年
関西電力病院 初期研修
2018年
医療法人杏和会阪南病院 精神科
精神科救急に加え、睡眠外来・認知症鑑別外来を担当
2021年
医療法人杏嶺会上林記念病院 精神科
2024年
岡崎メンタルクリニック 開院
厚生労働省 精神保健指定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医
モディオダール確定診断後処方医
【所属学会】
日本精神神経学会
日本睡眠学会
あわせて読みたい関連記事