アルツハイマー型認知症(AD)とは
脳の神経細胞が少しずつ減少して萎縮してしまう認知症です。海馬の委縮が見られるのが特徴です。時間の感覚や記憶障害が早くから見られるのが特徴です。症状に対して思い当たることや指摘されたことがある場合は、早めの受診を心がけましょう。
- 同じことを何度も言っていると周りから指摘される
- もの忘れがひどい
- 新しいことが覚えられなくなった
- 慣れた道でも迷ってしまうことがある
- ささいなことでイライラしたり、怒ったりする
- お金などを盗まれたと人を疑うようになった
- 今まで好きだったテレビ番組に興味を示さなくなった
- 家事の段取りが分からなくなった
病態・発症メカニズム
アルツハイマー型認知症は神経変性疾患の一種で、脳の神経細胞外に蓄積するアミロイドβ(Aβ)と、神経細胞内に蓄積するタウたんぱく質の異常が原因と考えられています。遺伝子変異によりAβが過剰産生されると、オリゴマーと呼ばれる小さな集合体が作られシナプスを障害し、さらにタウのリン酸化が進んで神経原線維変化が形成され、ニューロンの機能が失われていきます。こうした過程は発症の10〜20年以上前から始まるとされ、初期には自覚症状がないため、早期検出の難しさにつながっています。
症状の進行
ADはゆっくりと進行するのが特徴で、初期には最近の出来事を忘れてしまう近時記憶障害から始まります。進行に伴い、言語能力の低下や視空間認知障害、実行機能障害が加わり、時間や場所の認識が難しくなります。さらに進むと、失行や失語、失認などが現れ、最終的には寝たきり状態になることもあります。患者の約80%で行動・心理症状(BPSD)が出現し、抑うつや無気力、幻覚、妄想、攻撃性、不眠などがみられることが報告されています
診断と当院での評価
認知症の診断は、問診や心理検査に加え、脳画像検査を総合して行います。当院ではMMSE、MoCA-J、CDRなどの心理検査と身体検査を組み合わせ、認知機能低下の程度や日常生活への影響を評価します。MRIやCTで海馬や側頭葉内側部の萎縮を確認するほか、必要に応じてMRIやCTで海馬や側頭葉内側部の萎縮を確認するほか、脳血流SPECTやアミロイドPET検査を行うため、岡崎市民病院や藤田医大岡崎医療センターへ紹介します。アルツハイマー病の病理を直接反映するアミロイドPETや脳脊髄液検査は、早期診断や新薬治療を検討する際に重要な役割を果たします。
薬物療法
ADに対する既存の治療薬は、症状の進行を緩やかにすることを目的としています。主な薬剤には以下があります。
国内で最も長く使われているコリンエステラーゼ阻害薬で、軽度から高度まで幅広い病期に使用されます。副作用は吐き気や不眠、徐脈などがあり、体調に合わせた調整が必要です。
軽度〜中等度のADに適応があります。経皮吸収型の貼り薬タイプもあり、消化器症状などの副作用が比較的少ないとされていますが、貼付部位の皮膚症状には注意が必要です。
軽度〜中等度のADに適応し、液剤もあるため服用しやすい利点があります。主な副作用は消化器症状です。
NMDA受容体拮抗薬で、中等度〜高度のADに適応があります。副作用としてめまいや頭痛があるものの、消化器症状は比較的少ないとされています。
2023年に承認された新しい抗Aβ抗体薬で、アミロイドβを除去して病態そのものの進行を抑えることが期待されます。軽度認知障害〜軽度のADが対象で、2週間毎に点滴投与し、MRIで副作用(ARIA)をモニタリングする必要があります。適切な患者選択と専門医の管理が必須です。
非薬物療法と生活支援
認知症への対応は薬物療法だけでなく、生活環境の調整やご家族への支援が不可欠です。適度な運動や規則正しい生活リズム、音楽療法や回想法などの心理的アプローチが、認知機能の維持やBPSDの軽減に役立ちます。また、在宅での介護には身体的・心理的負担が大きく、介護保険制度を利用してデイサービスや訪問介護、ショートステイを組み合わせることが大切です。当院ではケアマネジャーや地域包括支援センターと連携し、ご家族が安心して介護できるよう支援します。